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2013年6月3日

パズドラが素直に凄いなと思った件。

ゲームってほんとにやらなくなった。その昔ドラクエにどれだけ時間を投入したことだろう。今では全くと言っていいほどゲームに割く時間がなくなった。

昨今の「ガチャ」関連ニュースは、半ば同情的に見ていた。射幸心という言葉を覚えたのはこのニュースがきっかけだ。
いろんな幸せの買い方があっていいと思うけど、お金の払い方は一昔前よりずっと簡単になってしまった分、自制のきかない人は自己管理するなり、誰かにされるなりしなきゃいけない。プレイヤー側に管理する手立てが無いなら、やはり何らかの規制は必要なのだろう。

そう言いながら、課金ゲームに対してお金を出す人の心理は、全然分かっていない。何が人を惹きつけ、財布の紐を緩めてしまうのだろう。
悪いとか、悪く無いとか、そういうことは別にして、結果的に多くの人を引きつけているプロダクトがどんな仕組みになっているのか知りたくなった。

「パズル&ドラゴン(パズドラ)」を入れたのはそんな経緯で、完全に調査目的である。1週間ほどやってみて、今、まさにミイラ取りがミイラになる体験をしたので書き残しておきたい。プレイヤーを惹きつけ、飽きさせず、金を払わせる仕組み。実に巧くできていると思う。ちなみにまだ金は払っていない。払ってやるものか。

1)育てる喜び
経験値を貯めてレベルを上げるという概念は、ドラクエ時代から変わっていない。成長したキャラクターはより強力な敵と対峙することができ、プレイヤーの親心を満たすことになる。「冒険する」という行為は、ドラクエやFFによってもはやハイコンテクスト化したのだと思う。洞窟に入れば戦うものだし、モンスターを倒せばレベルがあがり、ときには宝箱を落とすのである。そこに何の説明も要らない。そしてストーリーすら不要になった。

パズドラでは、敵と戦う場所となる「ダンジョン」をメニューから選ぶ。表示のあるダンジョンであればどれでも入ることが可能だ。ダンジョンに入れば順番に敵が出てきてくれる。十字キーを押し続ける忍耐はもう必要ない。「戦わせて育てる」というシナリオは、合理的な進化を遂げた。
ドラクエで思い出すのは、レベル上げである。街のまわりをぐるぐる回って、体力ぎりぎりまで戦って経験値を貯める。街で回復させてまた戦う・・・という、今考えるとぞっとするほど非生産的な時間である。

パズドラの目的は、モンスターを見つけて育てること、の1点のみである。世界を滅ぼそうとする悪魔も居なければ、捕まっている姫も居ない。なぜ戦闘するのかという理由はどこにも書かれていない。ストーリーが全然無い。
しかし育てる喜び、或いはモンスターを見つける演出は緻密に織り込まれている。確率操作による希少性や、「進化」という目に見える果実、難易度の高い戦闘での勝利。
面倒な操作や余計な脚色は廃し、育てる喜びだけに特化しているように思う。そしてそれは成功している。


2)パズル
パズドラにおける最大の特徴は、戦闘において導入されているパズルということになるだろう。操作は極めて単純だ。パズルで揃った色に応じてモンスターが勝手に攻撃するのである。そもそも、なぜにパズル?ドラクエ的「ガンガンいこうぜ」ではなく?

1週間ほどやってみて、なぜにパズルなのか、の理由が自分なりに氷解した。
これ考えた人、本当に天才だと思う。

まず、パズルとっているそれが、いわゆる一般的に捉えられているようなパズルではない、ということは名言しておきたい。
本来的に、パズルは「解く」ものだと思う。
しかしパズドラのパズルは、そうじゃない。どちらかと言うとコツの要る操縦桿でコントロールしているような感覚である。ストⅡで波動拳を出すような感じだ。

一応“パズル”のルールを書くとこうなる。
5x5の盤面に敷き詰められた全6色のボールのうち一つを動かし、同じ色を3つ以上並べれば、色に対応したモンスターの攻撃となる。ボールは盤面のどこにでも動かすことができる。動かす際に、他のボールを「押しのける」ため、A地点からB地点に移動後は、軌道にあった他のボールも動かすことになる。このボールの動きを利用して、複数のボールの色を揃える、つまり「コンボ」となり、攻撃がより強力になる。ボールを一旦動かすとタイムリミットが発生し、制限時間が来たところで強制的にドロップとなってしまうため、ボールの動きを予めきちんと読むことが有利に戦いを進めるための要件となる。

つまり、有利な戦いをするために、プレイヤーに「慣れ」や「習得」を要求しているのである。これは重要なポイントだと思う。

仕事もそうだが、「わかってくると面白くなってくる」ものである。使いこなせるようになったら、その道具をずっと使い続けたくなるのが人間の本能なのではないだろうか。モンスターを育てながら、自分も育てているのだ。
ロールプレイングに、このような戦闘システムを導入するアイデア力。ゲームの世界は奥が深い。

このパズルの凄さは、もう一つある。
それは、楽もできること、だ。
別に、必ずしもコンボしなくても良いのである。低いレベルの的に、コンボさせる必要はないし、プレイヤーとしても、何度も戦闘を繰り返していると、さすがに疲れてくる。
パズルという形をとりながら、プレイヤーのマインドの緩急に対してルールが柔軟であることが、結果的にプレイヤーのストレスを無くすことにつながっている。

一見異質にみえるパズルという仕組みが、プレイヤーの心をガッチリ掴む仕掛けとして極めて有効に作用している。


3)ダンジョン
前にも書いたが、パズドラにはストーリーと呼べる「話」が無い。
ともかく、ロールプレイングゲームとして完全にハイコンテクスト化し、「戦う」と「育てる」要素だけが残った。
しかし「話が無い」代わりに、攻略すべきダンジョンには、適切な難易度設定とサービスが行われているように感じる。

ダンジョンはクリアするごとに新しいものが現れ、都度難易度が上がっていく仕様である。敵を倒しながらモンスターのレベルを上げていくのだが、強力なボス敵が出るのでさすがにスイスイとククリアさせてくれない。パズドラは、「ほどよい高さの難易度」となるボス戦攻略の繰り返しだ。プレイヤーへの少しの工夫と忍耐の要求は、プレイヤーのモチベーションを維持させるのに有効なのだろう。

ダンジョンに設定されるキャンペーンも、プレイヤーを引き止める仕組みの一つである。例えば、特定のダンジョンに、プレイヤーが有利となる条件が期間限定で設定されることがある。曜日によって異なるダンジョンが出てきたり、「エヴァンゲリオン」とコラボしたダンジョンまで存在する。ここまで来るとますます戦う意味がわからなくなってくるが、もはやプレイヤーにとって意味は不要なのである。



とにかく、プレイしていて我慢、忍耐が必要になるゲームだ。そしてそれは魔法石を買うことで解消できる。たった数千円で。

・・・長く書いたが、浪費した時間分、何かのヒントにはしたいと思う。