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2013年10月28日

60年代の音楽の匂い。ルー・リード氏死去によせて。

ルー・リードが亡くなった。71歳。
現在のロックを形作った重要なキーパーソンの一人がまた逝った。

メタリカとの異色のコラボが記憶に新しいところで、まだまだ活躍の幅広げてるイメージがあった。だから今回の訃報はあんまりにも突然。

たぶん、周りで「おい、ルー・リードが死んだってさ」と騒いでも、8割9割「誰?」という反応になる気がする。
ルー・リードを知らなくても、あのバナナのアルバムジャケット、あるいはひとり歩きしているあのバナナ自体は見たことあるでしょう。アンディー・ウォーホルの、あのバナナ。

Velvet Underground & NicoVelvet Underground & Nico
The Velvet Underground

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僕の中でこのアルバムは、1960年代という空気、自然体のようでいて人工的、踏襲的でありながら破壊的な、砂煙漂う時代の匂いを嗅ぐための一枚として位置づけられている。

30代で非リアルタイムな自分から見るこの時代の人たちは、閉塞する時代の中で、自由に生きてやれという猛烈なパワーでもがき、戦いながら逃避しているイメージがある。
「音を出す」ことが今よりも大事な表現手段だったはずの時代。音楽はそれを牽引する旗印であり、象徴であり、僕らにとって重要な記録である。

ロックという音楽は生まれた瞬間から、その時代の若者にとっての起爆剤、そして燃料であり続けた。破壊という逃避。色々考え、もがくうちに、人間ってなんだ、文化ってなんだ、自由平和ってなんだと自問自答して、パーンとはじけた先にあったのがこのルー・リードたちが作った音楽だと思うんだな。その、パーンとはじけた結果だけがパフォーマンスされるので、いきさつを知らないと何やってんだこの人達、ということになってしまうのだけど。


時代は巡って今、iTunesを無線で繋いだスピーカーから流れてくる彼らの音楽。
安っぽいのに愛嬌たっぷりで、おもちゃの万華鏡みたいに変則的で、自由だ。容易に手に入りそうで、今は手の届かないところにある自由。