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2013年11月25日

「かぐや姫の物語」のリアル


下に書くことはややネタバレになるのだけど、本作は実際に観ることが肝要。ぜひ劇場で体感してください。

「姫の犯した罪と罰」とあるけど、大筋はよく知られた竹取物語と大きく齟齬はないと思う。かぐや姫は突然現れて、交流し、苦悩して、そして去っていく。超越した存在である姫に、人は最後まで翻弄され、そして超越した存在であるかぐや姫もまた、成長の過程で現世の美醜を目にすることになる。これが姫に下された「罰」だろう。

では「罪」は何か。それは一切の穢れの無い世界において、下界に憧れを抱いたこと。天界においては危険思想といったところか。望み通り憧れの地で暮らすものの、現世の艱難辛苦に思わず月に助けを求めてしまう。しかし現世の美もまた、かぐや姫を魅了したのであり、まさにそれが「憧れたもの」であった。強い未練を感じたかぐや姫は強く残りたいと願うが、天界の大きな力に伏し、月に還っていく。

この作品の淡い色彩とラフなラインは美しがリアリティ表現とは程遠いものに見える。しかし、動きを伴ったそれは強烈な生命のリアリティであった。限りなく装飾を廃し、「動き」というアニメーション本来の機能を強調することで、「生きる」ことに光を当てた作品。そんな風に思った。