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2013年12月16日

バーティカルメディアについて



バーティカルメディアというのがネット業界で盛り上がってるみたいじゃないですか。
専門メディア。領域特化型メディア。掘り下げメディア。


理解していることをざっくりまとめて書くとこんな感じでしょうか。

ネットに散らばっている、従来無所属であった情報(乱暴にいえばマニアックな情報)を統合したり、同カテゴリのポータルサイトの情報を統合して横断的に閲覧できるようにしたり。より狭域なカテゴリをメディア単位化して切り離すことで、情報にさらなる秩序を与え、深みを生み出すことができる。集まるユーザーのプロファイルの解像度も上がり、広告としての有用性もあったりするわけですね。
加えて、一部メディアでは記事を書くのもユーザーだったりするから、小遣いも稼げてみんなハッピー、それがバーティカルメディア、という認識です。

これって、なんというか自然の摂理みたいなもんなんでしょうね。
情報過多で、もうやってらんないよ。」っていう世の心の叫びが、自然とこういう情報再編の動きをつくった。
でもまぁ言ってしまえば「ネットに新しい収納ができました」ってことで、それもそのうち当たり前になっていくんでしょう。ネットの情報は、これからもこういういくつかの大局を経ながらどんどん増加していくものなのだと静かに納得いたしました。

でも、でも。
肝心の読む「人」は増えないし、情報処理能力も変わらない。結局読まれる量は同じなんじゃね?という気もします。どこかのメディアのPVが「うなぎのぼりに増えた」のだとしたら、どこかがちょっとずつ減っている。そういうものだと思います。
もちろん、従来より深い情報に辿り着く確率が上って、ユーザーにセレンディピティを与える機会が増える、そして知的好奇心を喚起して・・・ということもあるでしょうが、かなり限定的なもののようにも思います。


■「読むインターネット」においては大きな変化はない

業界的、にはこういう大きな流れがあるわけですが、視点を転じて肝心の「読む」エンドユーザーにはUX上の変化はそんなに大きくはないですよね。

そもそも「読む」人たちにとって、Webそのものに対する期待値はもともと高い。広大なWebの世界のどこかには、必ず自分の求めるものがあるはずだっていう神話を信じている。だから、たとえ「新しい収納」でお目当ての情報に辿り着いたとしても、想定内のことだと思うんです。したがって、あくまで「読む」という行為におけるUXは従来とそんなに大差ない。


■バーティカル化がネットにもたらすもの

だから、僕は今のところ特別ネットですげー面白いことが起きてる、とは思ってなくて、むしろバーティカル化のその先に、ひょっとしたら「インターネットの生産力向上」みたいなものがあるのかなぁと期待してるんです。

まず、この情報のバーティカルメディア化で、プロファイルが近い人が集まりやすくなる。SNSなんかと絡んでいけば人も可視化されて、これまでよりも情報に秩序を持たせやすくなると思うんです。メディア側には情報の精度を担保するために専門家も居るだろうし。だから、バーティカル化っていうのは、情報がただ蓄積されるだけじゃなく、イニシアチブを握ったメディアがそこから新しいモノを産み出すことにも繋がるんじゃないか、と妄想しています。
さらには、関係の近い特化型メディア同士が互いの領域を守りながらコラボレーションしていくことで、さらなる化学変化が起き、新しいモノを創造していくという可能性も。


情報の海に、文化を持つ小さな島ができ、そこに港ができ、互いに船が行き来する・・・そんなイメージ。ただ無秩序に情報が集積されるだけじゃなくて、そこでの有機的な生産活動がネットに期待されることのひとつに加われば、ネットメディアはもっと面白くなるんじゃないかなと思います。なんか飛躍しすぎたなぁ。

つづきの話を書きました。