この、ピアノアレンジされた「チョコレイト・ディスコ」を聴いたとき、編曲というクリエイティブについて考えるようになりました。原曲はエレクトリックなイメージの強い曲。ピアノ1台で表現されたことで、しばらく元曲がわかりませんでした。まらしぃという人物が、元曲を完全に消化して再構成している感じですね。
仮に通常の編曲が、骨格となるメロディーラインへの肉付けだとしたら、この「チョコレイト・ディスコ」は骨格そのものもミキサーにかけてミックスしちゃった感じ。もはや元曲のアイデンティティすらもあやふやになっています。
結局、音楽というのはアレンジを聴くものなんですよね。
芯にあるメロディーラインに、重ねる音の数や音色スピードなんかの“配合”をアレンジャーが「料理」して、一つの音楽として成立する。
子供の頃、CDのブックレットに作詞作曲者の名前といっしょに編曲者の名前も併記されているのを見て、「この人の役割って何なんだろう」と思ってました。「作曲」なのだから、それで音楽は成立するんじゃないのか。なんとなく、編曲ってエンジニア作業で裏方仕事のイメージがあったわけですね。
ところがカバーという形で音楽に接するようになると、とたんに編曲者にスポットライトが当たります。その曲のアイデンティティとなる核だけを残して、編曲によって全く違う装飾を施す。それによって、元曲には無かったその曲の魅力が顔を出すこともあります。
編曲こそクリエイティブな楽曲制作工程といえるかも知れません。
チョコレイト・ディスコという楽曲と、静かなピアノ曲という本来対極にありそうなものの邂逅、そして融合。新しい世界。「ハイブリッド」というキーワードにも合っていますね。
このCMの場合、微速度撮影された緩やかな風景も、曲とぴったり合っています。音楽も、映像も、そしてプロダクトメッセージも全部一体となってる。今年一番好きなCMです。